ジムに通うと一度は「超回復」という言葉を聞いたことがあるかと思います。筋トレには超回復が重要で、筋肉をつけるには欠かせない概念です。
しかし、正しく超回復を理解しないと筋トレの効果は半減します。せっかくの頑張りを少しでも無駄にしないように本記事で超回復を学びましょう!
- この記事をおすすめする方
- 筋トレ初心者
- 超回復を知りたい方
- 筋トレを頑張っているのになかなか筋肉がつかない方
筋トレにおける「超回復」の重要性。
超回復(ちょうかいふく:supercompensation )とは、筋トレで傷んだ筋肉が次回は痛まないように強くなろうとする現象のことで、この超回復を繰り返すことで筋肉は大きくなり、強くなります。
平たく言えば「筋肉が疲労した後に回復する現象」です。
この理論はロシアの科学者Nikolai N. Yakovlev (1911–1992)が1950年頃に示しており、運動競技のトレーニング基礎理論になっています。
また、この考え方は筋トレだけに当てはまるものではなく、生物学的適応過程に基づき様々なことに共通します。
エビデンス1(引用)
トレーニングする時の人間の体力は4つのレベルに分けられる。すなわち、トレーニング前、トレーニング中、回復期間、そして「超回復」期間である。
トレーニング前の状態では、トレーニングの対象となる部位は基礎レベルの体力を持っている(グラフの最初の期間で示される)。トレーニングを行うと、トレーニングを行った部位の体力レベルは下がる(グラフの2番目の期間で示される)。トレーニング後、体は回復期間に入り、体力は基礎レベルにまで増加していく(グラフの3番目の期間で示される)。人体の調整機能により、次のトレーニングを見越してもっと高い体力を持つ必要性を、人体の組織は自ら理解するので、人間の体力は基礎レベルに達しても回復が終わらず、さらに増加する。その時点から、人間の体力は基礎レベルを超えた「超回復」の期間に入る(グラフの4番目の期間で示される)。続けてトレーニングを行わないと、人間の体力は次第に基礎レベルに落ちていく(グラフの最後の期間で示される)。この理論はロシアの科学者であるNikolai N. Yakovlev (1911–1992)が1949年から1959年の間に示したもので[2]、運動競技のトレーニングの基礎理論となっている。
回復期間中に次のトレーニングが行われると、オーバートレーニングが発生する可能性がある。超回復期間中に次のトレーニングが行われると、体力はさらに高いレベルへと進む。次のワークアウトが超回復期間が終わった後に行われた場合、体力は基礎レベルからやり直しとなる。
トレーニングを組み合わせることもできる。たとえば、回復期間中に意図的にいくつかのトレーニングを行って、より大きな超回復効果を達成することがある[3]。
Wikipediaより
エビデンス2(引用)
トレーニングの負荷刺激により身体が適応して、トレーニング前よりも身体機能が向上する現象のことです。トレーニングの負荷刺激により疲労した24~48時間後、身体機能が適応するために回復します。36~72時間後には、以前の負荷刺激に耐えるために超回復も発生します。これは疲労から身体がエネルギー源を十分に回復する生物学的適応過程のことを示し、生理学者Hans Selye氏の汎適応症候群に基づく考え方です。近年では、「フィットネス」と「疲労」を要因とするフィットネス-疲労理論という概念もあります。
日本アスレティックトレーニング協会
超回復を無視するとどんな弊害があるのか
超回復は前述したように、生物学的適応過程の一部で筋肉痛がなかったとしても、細胞レベルで疲労をしています。そのため、超回復を考えず闇雲にトレーニングを行なった場合、様々な弊害が生まれます。
中でも代表的な弊害は2つあり、「身体的な弊害」と「精神的な弊害」です。
身体的な理由【オーバートレーニング症候群】
トレーニングの基本に「オーバーロード(過負荷)」という考えがあり、筋トレは今できる重さより少しだけ強い負荷をかけます。その後の休養が筋肉の超回復を起こし、成長します。
この休養期間が足りず、回復できないまま疲労が溜まる状態をオーバートレーニング症候群と言います。
オーバートレーニング症候群になると、筋トレの効果が得られず場合によっては筋力が低下していくこともあります。
「筋トレを頑張っているのに効果が出ない。逆に細くなっている」と感じたら、オーバートレーニング症候群を疑いましょう。
精神的な理由【モチベーション】
100mを全力で走るスピードのまま、5kmのマラソンを走れますか?
超回復を無視し、連日トレーニングを行うと「運動効果が出ない・疲れる・効果が出ても短期的」などの理由からモチベーションが低下します。
モチベーション低下はトレーニングの継続を阻害します。これらを防ぐには超回復をしっかり行いながら、運動効果を少しずつ獲得していくことが大切です。
「1ヶ月後にスリムな体が欲しい!」という理由でジムに入会する方がいますが、このような方は長続きしません。
トレーニングの原則に「可逆性」というものがあり、ダイエットのリバウンドのように急激な向上は戻るのも急激です。すぐに効果が欲しい気持ちをおさえて、地道に行いましょう!
筋トレ後の超回復に必要な時間
実際に超回復はどのくらいの時間で行われるのか?大雑把にいえば48〜72時間と言われていますが、筋肉の大きさや普段の使用頻度は様々で、24時間で超回復する筋肉もあります。
トレーニング初心者のうちは2〜3日に一度トレーニングするくらいのリズムで十分ですが、慣れてきたら部位別に超回復を管理し、分割法なども活用しましょう!
24時間(腹筋・ふくらはぎ)
24時間で超回復する筋肉は使用頻度が高く、小さな筋肉です。日常的に使用頻度が高いため、持久能力・回復能力が高く超回復が早くなります。
- 24時間で超回復する筋肉
- 腹筋(腹直筋):小さい・使用頻度(多)
- ふくらはぎ :やや小さい・使用頻度(多)
「腹筋は毎日行って良い」と一度は言われたことがあると思いますが、24時間(1日)で超回復するためです。
かなり高強度に行う場合は、超回復に24時間以上かかる場合があります。筋肉痛が弾き始めた頃を目安に行うようにしましょう。
48時間(大きく、使用頻度が少ない筋肉)
日常的にそこまで使用頻度が多くないが、それなりに大きい筋肉は36〜48時間で超回復します。
中1日ほど空けてトレーニングするイメージを持ちましょう。実際にはある程度部位をまとめてトレーニングします。上半身は48時間、下半身は72時間でまとめると良いでしょう。
- 48時間で超回復する筋肉
- 上半身
- 大胸筋 :大きい・使用頻度(中)
- 上腕二頭筋 :やや小さい・使用頻度(中)
- 上腕三頭筋 :やや小さい・使用頻度(中)
- 下半身
- 大臀筋 :大きい・使用頻度(中)
- 上半身
72時間
一般的に言われている大筋群の多くは72時間で超回復をします。大筋群は大きな力を発揮できますが、持久力はあまりありません。疲労した後の回復力も低いため、超回復に時間がかかります。
超回復までの時間はかかりますが、逆の言い方をすれば一週間に2回ほどのトレーニングで十分であるとも言えます。
- 72時間で超回復する筋肉
- 上半身
- 広背筋 :大きい・使用頻度(少)
- 僧帽筋 :やや大きい・使用頻度(中)
- 下半身
- 大腿四頭筋 :大きい・使用頻度(中)
- ハムストリングス:やや大きい・使用頻度(少)
- 上半身
超回復の「嘘」と囁かれる話
「超回復」は広義に言えば様々なところで使われているそうです。これらの内容が混ざり、「超回復は嘘だ」という話が生まれています。
その話が本当なのか嘘なのか、よく聞く超回復Q&A5選を一緒に確認しましょう。
超回復という概念は古い!
超回復は1950年頃からトレーニングの基礎理論として示されています。古くからある理論ですので、「概念が古い」という意味では正しいかと思います。しかし、この古い概念は2021年現在も使われ続けており、「古くて役にたたない」ことはありません。
近年では「フィットネス・疲労理論」というものがあります。超回復と類似する理論ですが、トレーニング後の疲労との付き合い方を示してくれています。(参考ブログ:S&Cつれづれ様)
この理論があるため「超回復は古い」と言われがちですが、フィットネス・疲労理論はトレーナーやコーチが考えるべき理論です。
「仕事のパフォーマンスに影響が出るから明後日の仕事までに筋肉痛をしっかり無くそう」と考える方はいますか?
ダイエットをしたい、筋肉をつけたいなど、スポーツや競技に関わらない一般の方は多少筋肉痛や疲労が残っていても日常生活にはそこまで支障がありません。「超回復」の考えまでを理解していれば十分です。
超回復と食事は関係しない!
超回復と食事は大きく関係します。食事を適切に摂らなかった場合、疲労している筋肉に栄養が届かず回復しにくくなるためです。
超回復までの時間は今のあなたに適切な負荷がかかって、適切な休養と栄養をとった場合です。人手不足になると仕事が遅れるように、栄養が足りなくなれば超回復も遅れます。
人の体は様々なことに左右されて、心身ともに影響が出ます。食事はもちろん、睡眠やストレッチなども超回復を適切なリズムで保つ大事な要素です。筋トレしたらしっかり休み、食事を摂るように心がけましょう。
実際にどのように食事をとったほうが良いか、タニタ食堂で話題になったTANITAさんがとてもわかりやすい記事を公開しています。
プロテインを飲むと回復が早い?
- Q:筋トレ後30分以内にプロテインを飲むと超回復が早くなる?
- A:超回復が適切に行いやすくなります
トレーニング直後はエネルギーが枯渇している状態になり「急いでエネルギーが欲しい」という状態になっています。そのため、トレーニング後早めに栄養補給をすることで吸収率が高まり、筋肉を修復する作業工程が早くなります。
傷ついた細胞はタンパク質によって修復されますが、運動後の食事をジュースやサラダなどで済ませてしまうと筋肉の修復には効果が不十分です。
そのため、運動後には栄養バランスのとれた食事やプロテインでタンパク質を摂取することをオススメします。
また、運動後の体は、大量にエネルギーや栄養素を消費したために一種の飢餓状態です。
飢餓状態の体へ食事やプロテインを与えてあげるとみるみる吸収されます。
つまり、運動後は栄養素の吸収率が高いのです。なお、運動後45分以内であれば、筋肉へのアミノ酸輸送量が3倍にアップすると言われています。
森永製菓のプロテインポータルサイト
筋肉痛には湿布を貼ると良い
- Q:筋肉痛で歩けません…湿布を貼りましたがあまり効果がないです。
- A:長く続く場合は整形外科医の診察を受けましょう
筋肉痛に湿布はあまりおすすめしません。湿布と言っても種類がありますが、貼っても効果が現れないことが多いです。湿布の種類によっては帰って悪化させてしまうこともあります。強い痛みを感じたらまずはアイシング(氷嚢などで冷やす)がおすすめです。また、過度な筋肉痛が起きないようにトレーニング内容を見直しましょう。
- 筋肉痛対策に行うこと
- 今の体力に沿ったトレーニングを行う
- トレーニング後のストレッチを入念に行う
- しっかり食事を摂る
- 十分な睡眠時間を確保する
- 生活リズムを崩さない
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